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最後の麹蓋(こうじぶた)職人

最後の麹蓋(こうじぶた)職人
「本柾(ほんまさ)でないと、ねじれたり、ヒビ割れしたり、狂いが生じるんでしょう。麹室(むろ)の中は温度が高いし、乾湿差もある」わたしは、二杯目を彼の湯飲みに注ぎ入れた。「それもありまっ。だいいち底板同士をハギ(つなぎ合わすこと)ますのに、製材の板目では竹クギが入らんのですわ。なんちゅうても、本柾でないと良いコウジができん」「そこなんですよ。分からないのは」「あんさん。おひつを使いなはったことありまっか。あの理屈だす。おひつのご飯は米がベトつかず、おいしかったですやろが」「中学生のころまでは、実家で使っていましたね。

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フカフカしたご飯だったなあ」吟醸酒で顔を紅らめた彼は立ちあがると、わたしをとなりの土間へとうながした。物置の引戸を開け、おひつを一個取り出す。よく見ると、おひつの蓋、側、底板まできれいな柾目模様が描かれているではないか。「つまりや。コウジの水気を本柾が自然に吸収してくれますのや。板目やと、こうはいきまへんで。なんせ、サラッとしたハゼ込みのあるコウジが、酒造りに一番向いとるもんなあ」(「旨い地酒を求めて」昭和63年出版 北川広二) 最後の麹蓋職人だという当時75歳の松本平一を奈良県吉野町に訪ねた時の聞きとりです。

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2008年04月15日 01:28に投稿されたエントリーのページです。

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